
カーフェリーの災害
平成八年三月二十一日放送
船員災害防止協会商船課長
金山清志
一九九四年九月二十六日、フィンランド南西のバルト海で大型フェリー「エストニア」号が沈没し、死者九〇〇人を超す大惨事になった海難は、今も皆さんの記憶に新しいところです。
事故原因は、船首の車両昇降口の内側ドアが十分閉められていなかったとのことでした。
この事故を契機に、国際的に安全対策の見直しが検討され、新STCW条約ではロールオン・ロールオフ旅客船乗組員の訓練要件が新たに追加され、平成九年二月一日に発効の予定です。
幸いにも、日本国内では未だこのような大惨事は起こっていませんが、この機会にもう一度初心にかえって安全対策を見直す必要があると思います。
大型カーフェリー労務協会がまとめた、平成六年度の「大型カーフェリー船員災害・疾病発生状況」によれば、「はさまれ」事故が最も多くなっています。
これは、いろいろな種類の車両を、決められた時間内に積載しなければならないためと思われます。
事故防止の対策としては運転手と誘導員が呼吸を合わせること、それに車両固縛者は不安全な位置に立たないことです。
それから暗がりでも作業者が容易に判別できるように、作業衣やヘルメットには蛍光テープを貼るなども必要です。
二番目に多いのは「転倒」事故です。
転倒とは何か物につまずいたり、滑ったりしてころぶことですが、船上にはいろんな障害物があり、床面は鉄板で滑りやすい構造となっています。
転倒した場合、ぶつかる相手が鉄製の構造物であることが多いため、重大災害になることもあります。
転倒の多く発生する場所としては甲板上、通路、階段などいろいろありますが、カーフェリーの車両甲板には固縛用などの突起物が多く、作業中は足元に十分注意しなければなりません。
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